在宅での嚥下障害のアセスメント

梶原診療所 内科・在宅サポートセンター長
平原佐斗司

(メディカルトリビューン社 Home care medicine 2003年1月号 Q&Aより)

嚥下障害は、脳卒中や神経難病等を基礎疾患として起こる在宅医療では日常的によく見られる問題です。嚥下障害をもつ方が自ら 「嚥下障害があります」と訴えることはないので、嚥下障害の診断と評価は医師や看護師が疑うところから始まります。神経疾患をベースとして、「痩せてきている」「食事時間が長くかかるようになる」「時々発熱する」「食事中、食後に咳やむせ、ゼロゼロ、ガラガラ声(声枯れ)がある」「食べると疲れる」等の症状あった場合は、嚥下障害を疑い、ベッドサイドアセスメントを実施します。

空嚥下が一秒以内であるか、唾液反復嚥下試験(RSST)で、30秒間に2回以上嚥下が可能かをみることは、ベッドサイドで簡単に実施でき、感度も高く、意思疎通が可能な患者に対しての嚥下障害の拾い上げにはよい方法です。同様に「30cc水のみテスト」は、常温の水30ccを座った患者の手に渡し、「この水をいつものように飲んでください」と説明し、水を飲み終わるまでの時間やプロフィール、エピソードを測定観察する方法ですが、ベッドサイドアセスメントとして頻用されています。しかし、空嚥下やRSSTでは意思疎通が可能な患者、水のみテストではコップが保持できる患者にしか実施できないというデメリットがあります。

30cc水のみテストの評価法
《プロフィール》
  1. 1回でむせることなく飲むことができる
  2. 2回以上に分けるが、むせることなく飲むことができる。
  3. 1回で飲むことができるが、むせることがある。
  4. 2回以上に分けて飲むにもかかわらず、むせることがある。
  5. むせることがしばしばで、全量のむことが困難である。
《判定》
正常範囲:プロフィール1で5秒以内
疑  い:プロフィール2

異  常:プロフィール3,4,5

Teramotoらが報告した簡易嚥下誘発試験 (Simple Swallowing Provocation Test ; S-SPT)は、シリンジとカテーテルのみで、ベットサイドで簡便に施行可能で、患者負担が少なく、 繰り返し施行可能であり、意思疎通不可例やねたきりや四肢麻痺の患者でも実施できます。さらにS-SPTは一般的な水のみテストと比べ、感度、特異度とも高く、信頼性が高いのも特徴です(Sensitivity76-100%(WST;70-71%)Specificity84-100% (WST;70-72%))。私は、S-SPTの変法を日常的に頻用しています。本法は口腔内清拭後、臥位にて施行します。通常使用するエキステンションチューブ(内径4mm)と5ccシリンジを使用し、口腔から(原法は鼻腔から)中咽頭に挿入し、口唇で軽くくわえさせ、0.4cc、1cc、2ccの順に水を注入し、嚥下運動の誘発までの時間を測定します。 正常の場合は0.4ccの少量の注入で嚥下反射が誘発されます。

判定基準は、 「2ccで嚥下反射(-)であったり潜時が3秒より長い場合」は経口摂取不可と判定します。「1CCで嚥下反射が潜時3秒以下で(+)の場合」は、経口摂取可能と判断し、直接嚥下訓練を開始します。(これはTeramotoらが、脳卒中発症20名を調査し、S-SPTで1ccで3秒以内に反射(+)であったものはその後肺炎の発生なかったのに対し、2ccで3秒以内に反射を認めなかったものは、その後肺炎発生の危険性が高かったという報告による。Decision-making for safe feeding after stroke  (Teramoto. et.al Lancet 14 Oct 2000))

1CCで嚥下反射が潜時3秒以下で(+)の場合は、食物テストによる評価を行います。冷水3ccで嚥下時にむせがなく、誤嚥、肺炎の徴候がなく、プリンを用いた食物テストでむせがなく、口腔内に残さがない場合は、直接嚥下訓練を開始します。

両者の中間にあたる、「2ccで嚥下反射が潜時3秒以内で(+)であるが、1CCで嚥下反射を認めないあるいは潜時3秒より長い」場合は、やはり嚥下造影やファイバースコープによる精査が望ましいと思います。嚥下障害の評価において、嚥下造影にまさる方法はなく、ボーダーラインにある方で、何とか来院可能な方は嚥下造影を行うほうがよいでしょう。しかし、どうしても精査が必要だが、来院不可の方には、携帯用ファイバースコープを用いた内視鏡検査という方法もあります。

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