在宅での肺炎の診かた

梶原診療所 内科・在宅サポートセンター長
平原佐斗司

(メディカルトリビューン社 Home care medicine 2004年2月号 Q&Aより)

高齢者の肺炎の死亡率は20%-40%といわれ、高齢者の肺炎は、かかりやすく、重症化しやすく、治りにくい、しばしば死にいたる病気といえます。明確なデーターはありませんが、高齢者の肺炎の約半数が誤嚥性肺炎と推測されています。

高齢者は、肺炎をおこしても、咳や痰等の典型的な症状がでにくく、「何となく元気がない」「食欲低下」「瞻妄」「起立歩行困難」「失禁」という非典型的な症状を呈することがほとんどです。高齢者の肺炎には無熱肺炎が多いと言われていますが、よく観察してみると発熱することの方が多く、全くの無熱肺炎は数パーセントしかありません。これらの非定型的症状や発熱の持続をみた場合、肺炎は疑うべき疾患の第一に挙げられます。

高齢者の誤嚥性肺炎の場合、coarse crackles以外に、Rhonchoやwheeze、squeakly sound等の連続性ラ音を呈することもあり、聴診所見に特異的な所見はありません。パルスオキシメーターで普段からSPO2を測定しておき、SPO2の低下を確認することは有用です。

在宅医療で肺炎との鑑別が必要な疾患は、肺結核、心不全、気管支喘息などです。発熱がなく、Ⅲ音を聴取せず(左心不全におけるⅢ音の感度は16-31%特異度は95-100%)、大水泡音(coarse rale)のみを聴取する例では心不全との鑑別が、wheezeのみが聞こえる場合はびまん性嚥下性細気管支炎、喘息、心不全との鑑別が問題となります。

訪問診療では、レントゲン撮影よりも血液検査を行う方が簡単なため、感染症を疑った時は血液検査をすることが多くなります。高齢者では、白血球数以上に左方移動に注目する必要があります。各症状・検査異常の出現順は、「症状」→「白血球の変化」→「CRP」→「血沈」→「胸部レントゲン等画像の変化」で、改善はこの逆の経過をたどります。在宅医療では、発症直後に診察することもあるので、血液検査でWBCの左方移動のみみられCRPの上昇がわずかな場合もあります。

胸部レントゲンは、在宅医療においても肺炎の診断に有用であり、必要な場合はためらわずに、ポータブルレントゲンの撮影を行うべきです。高齢者の場合、浸潤影の大きさのみから肺炎の重症度を決定できないこと、び漫性嚥下性細気管支炎等の場合、明らかな浸潤影を欠く場合が多いことに注意すべきです。

喀痰検査は肺炎かどうかの診断については有用ではありませんが、慢性下気道感染症をベースにした肺炎の場合、起炎菌が同定される頻度が高いので実施すべきです。また、喀痰検査は、結核との鑑別に有効な場合があります。

呼吸不全の合併(PaO2≦60Torr.SPO2≦89、低酸素血症により、呼吸数≧30回となる場合など)やショック、DIC、多臓器不全、急性腎不全の合併、empiric therapy で正しく選択された抗生剤で3日以内に反応が見られない場合、くりかえす嚥下性肺炎で経口摂取をストップせざるを得ない場合は、入院の適応と考えられます。

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