在宅での膀胱留置カテーテル管理の実際

メディカル朝日2005年7月号「Dr平原の在宅医療のつぼ」より

東京ふれあい医療生活協同組合 梶原診療所
平原佐斗司

在宅医療では種々の理由で自己導尿あるいは介護者による導尿ができない場合が多く、膀胱留置カテーテルが選択される機会が多い。

  1. 膀胱留置カテーテルの適応

    膀胱留置カテーテルの適応を表に示す。在宅医療では、絶対適応である萎縮膀胱は少なく、尿路の通過障害があるが、根治治療が困難で間欠的自己導尿ができない場合(準絶対的適応)が多い。また、感染を伴う褥瘡がある場合など、本来の適応ではないが、主に介護的理由によって止むを得ず膀胱留置カテーテルを使用する場合もある。この場合は留置期間をできるだけ短期間とし、二週間以内に抜去できないかを検討するべきである。

    ≪表 膀胱留置カテーテルの適応≫
    絶対的適応 膀胱容量が50ml以下(萎縮膀胱)の場合
    準絶対的適応 100ml以上の残尿を認める場合あるいは尿閉(自己導尿が困難な場合)
    相対的適応 夜間頻尿のため睡眠が障害される場合
    尿失禁のため皮膚炎や褥瘡が悪化する場合
  2. 膀胱留置カテーテルの基礎知識

    人の尿道に最も適切したサイズは14-16Fr(4.7mm~5.3mm)である。カテーテルの材質としては、ラテックスとシリコンがあり、シリコンの方が高価だが閉塞しにくい。その他にも粘膜の刺激を少なくしたり、すべりを良くしたり、感染しにくくしたり様々な工夫がされているカテーテルがある。尿道カテーテルの先端の形状は、先端が丸く側孔があるラウンド式、硬くこしが強いチーマン式、先穴式などがある。感染予防の観点からは、通常外部との交通が少ない2wayを使用し、3wayは結石や凝血塊形成の予防目的で膀胱洗浄を行う場合に使用する。バルンの容量は5cc~30ccのものまであるが、通常成人は10ccを小児は5ccを使用する。(止血目的では30ccを使用。事故抜去が予想される人にはバルンの蒸留水を少なくとも20cc以上とする。)蓄尿法には、開放式と閉鎖式があるが、感染予防の観点からは閉鎖式が望ましい。ハルンバックの容量は500-2000ccまであるが、通常在宅では2000ccのものを使う。ハルンバックは必ず体より40cm程度下におき、逆流を防ぐことが大切で、ベッド使用が原則である。

    膀胱留置カテーテルの場合、間欠的導尿と異なり、挿入操作には無菌捜査が必要である。

    挿入後、女性はカテーテルを下腿に、男性は尿道の瘻孔形成をさけるため下腹部に固定する。感染の防止のためには、外尿道口の清潔を保つことが重要で、通常石鹸による洗浄か蒸しタオルによる頻回の清拭が有効である。4週間以上の長期留置は結石形成を引き起こすため、在宅では2週間に1回カテーテルを交換している。

  3. 膀胱留置カテーテルの合併症と対処法

    膀胱留置カテーテルでは、無菌操作でカテーテルを挿入しても、2週間たてば細菌尿は必発する。細菌尿が見られても感染の症状がなければ抗生剤は不要であるが、熱発など明らかな感染所見を認めたときは、留置カテーテルを入れ替えてから培養検査をだした上で抗生剤を投与する。感染予防のためには尿量を1500ml以上(最低1000ml)に保つようにする。男性では、腎盂腎炎の他、急性前立腺炎、急性精巣上体炎の合併もあり、この場合感受性、移行性のある抗菌剤を投与し、局所冷却固定を行う。一週間様子をみても改善しない場合は入院治療を行い、膀胱瘻を作る方が好ましい。

    尿漏れについては、詰まりやカテーテルの折れがないか、またバルンが均等に膨らまないため、先端が折れていることもあるので、カテーテルの交換を試みる。これでも尿漏れするようなら、カテーテル挿入の刺激でスパスムが助長されている可能性があり、膀胱の収縮をおさえる薬剤の投与を考慮する。太いバルンへの入れ替えは、尿道狭窄を引き起こすことがありすすめられない。

    男性のカテーテル挿入困難例では、ショックに注意しながらキシロカインゼリー10ccを尿道から注入する。それでも挿入困難な場合はチーマンカテーテルを使う。挿入困難時に無理をして挿入を試みると合併症を引き起こすことがあるので、応急処置として恥骨上から穿刺排尿を行った上で、泌尿器科専門医にコンサルテーションする。

    カテーテルの抜去困難時は、インフレーションバルブから水を1cc注入し、詰まりが改善するかどうかを見る。次に30-50ccの固定水を入れてバルンを破裂させるか、アセトンやエーテルを入れ、体温の上昇によりバルンを破裂させる。それでもだめなら、膀胱を十分充満させた後、エコーガイド下に恥骨上から23Gカテラン針でバルンを穿刺する。

    長期留置によってカテーテル周囲に膀胱結石が形成されることがある。予防法としては、「同じカテーテルを4週間以上挿入したままにしないこと」「バルンの材質をシリコンに変えてみる」「水分の摂取を促す」「体位変換を促す」「ダイアモックス等尿酸排泄を増す内服薬が処方されていないかをチェックする」「クランベリージュースを飲用する」などが挙げられる。これらの方法で予防できない場合は定期的に膀胱洗浄を行う。結石がしっかり形成されたら、外科的にとりだすしかない。

    カテーテル周囲の尿道炎のため、尿道と皮膚(多くが陰茎腹側と陰嚢境界あたり)に尿道皮膚瘻ができることがある。経尿道的カテーテルを断念し、膀胱瘻を造設する。また、陰茎に血流障害をおこし、陰茎褥瘡が起こることがある。予防としては、適切なサイズのカテーテルを使用すること、外尿道口、陰部の清潔を保持すること、正しい固定法で固定すること、やわらかいカテーテルを用いることが挙げられる。治療としては以上の予防法をおこないながら消毒を行なうが、しばしば経尿道的カテーテルを抜去し、膀胱瘻の造設が必要となる。

    膀胱留置カテーテルを長期に挿入している患者で、排尿筋が発作的に不随意に痙攣し、恥骨上部に激痛が生じ、強い尿意を生じることを膀胱痙攣という。対策としては、「ラテックスやシリコンなどの疎水性カテーテルを親水性カテーテルに変更する」「カテーテルサイズが大きければ適切なサイズに変更する」「バルンの固定水を減らす」「膀胱や前立腺の感染、炎症が原因の場合は、膀胱瘻を造設する」などの対策を考える。直腸や骨盤内の癌の浸潤や放射線治療後のためにおこる膀胱痙攣は対処が困難である。上記の対策の他に、抗コリン剤やNSAID、場合によってはオピオイドの投与を試みる。それでも改善しない場合は、入院して持続硬膜外ブロックを行う。

  4. 膀胱瘻

    膀胱瘻とは、恥骨上部の下腹部から腹壁を通して膀胱との瘻孔をつくり、膀胱内にカテーテルを挿入し、永久もしくは一定期間尿を体外に排出する方法である。通常、カテーテル排尿が必要な場合で、経尿道的な膀胱留置カテーテルによる排尿に問題がある場合(尿道皮膚瘻など)が膀胱瘻の適応である。

    膀胱瘻は、「侵襲的処置が必要」「萎縮膀胱では施行できない」「美容上の問題」などの短所はあるが、それを補う長所として、「カテーテルの交換が容易」「経尿道カテーテルより清潔を保ちやすく、感染の恐れが小さい」「会陰部の違和感や痛みが少なく、自転車やバイクなどに乗ったり、あぐらをかいて座るなどの姿勢が楽になる」「前立腺炎の増悪をさけることができる。」「経過観察中に自尿の観察が可能」「太いサイズのカテーテルを留置できるので、閉塞を繰り返す例に有効」などが挙げられる。

    膀胱瘻造設は、局麻下に安全に施行可能で、侵襲も少ない。造設はもちろん熟練した泌尿器科医が外来で行うほうが好ましいが、全身状態に問題がなければ在宅でも施行可能である。膀胱瘻の造設には、膀胱瘻キットを用いるとよい。造設手術直後の第一回目のカテーテル交換は、瘻孔が完成する3-4週後に行う。

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